スポンサーサイト
-------- -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
この記事のURL | スポンサー広告 | | | ブログトップページへ
『 トナカイ月 』は、スゴ本
2009-07-31 Fri 22:16
2009年7月31日(金)

もとより読書量の少ない私である。
自分の守備範囲、興味のアンテナに引っ掛かる、ごく狭い範囲の
本だけでも、とても読みきれず、アップアップしている。
一生読まない本、存在すら知らずに過ごしてしまう本など、もう無
限にあるわけだ。
が、たまたま誰かに勧められて、自分とは無縁だったはずのそん
な本を読んでみて、それが「読んで良かった」と心から思う本だっ
た時、私はその人に本当に感謝してしまう。
「トナカイ月」は、そんな1冊だった。

読んだきっかけは、こうだ。
大学時代の友人たちと、麻布十番で食事とお泊まり飲み会をし
た時
、床に就いてからも長々とオシャベリをして、一番遅くまで
起きていたのは、私とO田さんだった。
「…最近どんな本を読んでいるの?」という私の質問に答えて、
彼女が挙げた本は、私がタイトルを聞いたこともないような本ば
かりだった。
で、私は枕元のケータイに手を伸ばし、彼女の言う本のタイトル
だけをとりあえずメモしてきたのだった。
(著者名などは、後でネットで調べがつくと思ったから。)

帰宅後には、ケータイのメモを見て、4、5冊の書名をすぐに検
索。アマゾンのショッピングカートに放り込んだ。
(買う買わない、読む読まないは後で検討するとして、最近は、
 気になった本は、とりあえず覚え書き代わりに、アマゾンのカ
 ートに入れておく私である。)
「トナカイ月」は、すぐには見つからなかった。
と言うのも、話を耳で聞いてメモした為、私は、この本のタイト
ルを、「トナカイ好き」だと思い込んでいたのだ(笑)。
ヘミングウェイ賞を受賞した本だと聞いた記憶があったので、
「トナカイ好き ヘミングウェイ賞」
という無理やりな検索で、何とか探し出したのだった。


どうやらO田さんは、海外のベストセラーをよく読んでいる模様。
道理で、私の知らない本ばかりなわけだ。
(考えてみれば、私は、殆ど日本国内の本ばかり読んでいる。これ
 は、海外作品だと、どんなに面白いものを見つけても仕事に使
 えない…著作権の許諾を取るのが面倒なので、版元さんが敬
 遠する…ということも、ちょっと関係するのだが。)

O田さんオススメの本の中で、私がまず読んでみたのは、一番取っ
つきやすそうだった、「犬たちの隠された生活」。
(姉妹編に「猫たちの隠された生活」もあるが、こちらは未読。)

犬たちの隠された生活犬たちの隠された生活
(1995/08)
エリザベス・マーシャル トーマス

商品詳細を見る


これがなかなか面白かった。
これは筆者が「犬に意識はあるのか? 犬は何を考えているのか?」
を研究するために、11頭もの犬を飼い(うち、10頭は、著者の許で
全生涯を過ごした)、なるべく「しつけ」などの人間の手を加えずに
観察した記録である。
犬というのは身近な動物で(私は犬を飼ったことは一度もないが)、
通常は、「主人」である「人間」に従うことを喜びとする生き物だけ
れど、本来は、「犬社会」の中で、犬同士の関係を何より大切にす
るのだということがよくわかる。
本の最初の頃は、この研究をするきっかけになったミーシャという
1匹の雄犬のことが長々と書かれていて、それも興味深くはあるが、
何より、犬たちが集団で暮らすようになってからの様子が大変面白
い。 犬にも相思相愛や貞操があるし、そういうのは無しに、子種を
得るためだけにクールな交尾をすることもある。望まない子を孕む
こともあるし、そんな場合は、群れの仲間から冷たい仕打ちを受け
たりもするのだ。

著者は、もともと人類学者であって、研究者らしい冷静な観察眼で、
そんな犬たちの意識・感情を描いている。
そして同じ著者が、1950年代にアフリカのカラハリ砂漠で原住民の
ブッシュマンと数年間、生活をともにした経験をもとに、原始の人々
の暮らしを小説として描いたのが、「トナカイ月」である。

犬たちですら、これほどのドラマがある。
同じ著者が、「人間」を観察して描いたものなら、さぞ面白いに違い
ない。
それで、「トナカイ月」を読んでみる気になったのだった。

・「トナカイ月―原始の女ヤーナンの物語」〈上・下〉

トナカイ月―原始の女ヤーナンの物語〈上〉トナカイ月―原始の女ヤーナンの物語〈上〉
(1992/10)
エリザベス・マーシャル トーマス

商品詳細を見る


これは、ちょっと高価な2冊組なので購入をためらい(笑)、取手図
書館の蔵書検索
で書庫にあることを確かめて(今は図書館にある
本をネットで調べられるので本当に便利だ)、夫に借りてきてもら
った。 (自分で借りてきてもよかったけれど、週に1~2度は図書館
通いをしている夫を使う方が便利だ…笑)
  
[ 続きはここから… ]

本の予想以上のボリュームに、正直、最初はちょっと、めげた。
決して取っつきやすい本ではない。
私は、こなれた日本語の文章を読むのが好きなので、翻訳物を読
む時には(ハリー・ポッターなんかでも)、脳の読み取り機能のエン
ジンがかかるまで(文体に馴染んで、内容がすっと頭に入るまで)
いつも時間がかかる。
しかもこの本は登場人物が多く、主人公が最初の頃に一族を紹介す
るのだが、その記述と、付属の「登場人物一覧」および「人物の血
縁関係図」を照らし合わせて確認していたら、読み始めた晩は、そ
れだけですぐに眠くなってしまった。
果たして、この本を、途中で投げ出すことなく、最後まで読み通す
ことができるのか…?
自信はなかった。

しかし、読み進め、話が展開してくるに従って、驚嘆に継ぐ驚嘆。
これを読まずにいたら、ものすごい損失だった…と思うほどの読み
ごたえであった。

実は夫も、この本を昨夜から読み始めている。
明らかに夫の普段の読書の嗜好とは違うし、動物についての記述も
多いから、その辺は夫にはあまり興味がない部分かもしれない。
でも、主人公の少女時代だけでも読んでおく価値があるから、上巻
の途中まででも読んでみたらいいよ、と私が勧めたのだ。

夫も、私同様、冒頭部分で手間どっているようで、今朝は
「この本は、どういう風に面白くなるわけ?」
と尋ねてきた(笑)。

「う~~ん…。“面白い”とか、“感動する”とかじゃなくて、とにかく
 “スゴい”の。 騙されたと思って、もう少し読んでみてよ」
と答えた。

単に、面白いとか、ためになる、感動できる、という本ならいろいろ
あるが、これはまさに「スゴ本」。
少なくとも私が近年読んだ本の中で、「スゴ本」という形容がピッタ
リなのは、この本だけかもしれない。
(“スゴ本”と言う言い方は、Dainさんの専売特許かもしれないけど。)

内容については、すごく書きたいけれども、書いてしまうと、これか
ら読む人の楽しみを損なってしまうと思うから、ストーリーと関係な
いところを少々ご紹介。

まず、時代が「旧石器時代」というのがスゴい。
いくら古い題材を扱った時代小説だって、だいたいは、ギリシャ・
ローマあたりの「古代」が舞台ではなかろうか。
が、「トナカイ月」は、「原始」の暮らしを1人称で語っている。
主人公はヤーナンという女性で、物語の初めでは、ヤーナンは多分
10才前後(初潮前)の少女だ。
場所は、今で言うシベリアの南部。
なぜ、そんな寒い所に?と思うのだが、2万年前は北半球の大半が
氷河に覆われていて、シベリアは比較的棲みやすい場所だったのだ。
ヤーナンはそこで、伯父一家を中心とする一族とともに、20人近くで
1つの小屋に住み、現在の私たちがイメージするイヌイットの暮らし
に近い生活を営んでいる。
季節によって移動するところは、遊牧民に近いところもある。

男は「肉」(つまり食糧)を支配し、女は「血筋」を支配する。
ある女の生んだ子は、すべて、その女の血筋とみなされる。
同じ血筋の者同士の交接や結婚はタブーである。
だから、一夫多妻は合理的だ。
そうでなければ、一族の中が同じ血筋の者ばかりになってしまう
からだ。
(もちろんそのタブーを犯す者もあって、トラブルが生じる。)

読んでいるときは気づかなかったが、訳者あとがきによると、使用
する言葉にも細心の注意が払われているようだ。
著者トーマスは、アングロサクソン系の言葉だけを用いて、極力、
ラテン語系の言葉を排しているそうで、そう聞いても日本人にはピ
ンと来ないが、訳者もそれに準じて、なるべく漢語や外来語は避け、
和語=やまとことばで訳出したのだそうだ。
その時代になかったものを使った表現は、慣用句であっても使って
いない。(例えば、原始の彼らにはまだ「神」の概念がないから、
「神がかりになる」という言葉も使わない。動物の名称も、そのまま
日本語にすると、例えば「北極狐」になる場合、原始の彼らが「北極」
という言葉を使うのは不自然だから、単に「キツネ」と訳す…といった
具合。)
漢語は、例えば「(獣が)咆哮する」とか「(人が)性交する」という
ように、現象を示す表現は出てくる。
「性交」というのは、少女のヤーナンも、実態はよくわからぬながら、
自然に受け止めている。
夫婦の営みは、一族がいる小屋の中で行われるのであるから、その
気配やあえぎは、皆が「聞こえなかったようにふるまう」という暗黙の
了解もある。(時には屋外で行われることもある。)

この本を読んでいると、自分の中の「原始」の血を自覚する。
今私が生きているということは、遠い遠い祖先をたどれば、2万年前
にも、この地球上のどこかで、私の祖先も生きて、この本に描かれて
いる人々とそんなには違わない、狩猟採集の暮らしをしていたはずだ。
(ヤーナンたちは、民族で言うとモンゴロイドだから、私の祖先も、
 実際に、これに近い生活をしていた可能性も高い。)
その人たちがいたからこそ、今の自分も生きている…その連綿とした
命のつながりを感じるのである。

そして、彼らの生活と、今の現代人の生活とは、何と違ってしまった
のだろうと思う一方で、私たちの生活も、本質的には彼らの生活と何
ら変わらないではないか…とも思う。
人間関係のトラブルが多発することも、今と変わらない。
(一番違うのは、動物たちとの関係性かもしれない。
 原始の人々は、自分たち人間が、動物の中の1つの種でしかないこ
 とを謙虚に自覚し、動物たちとの駆け引きの仕方を心得ている。
 「食われずに食う」ためのその知恵には、本当に感心させられる。)

この本を読んでいる間、自分がやることなすこと、彼らの生活になぞ
らえて考えてしまった。
例えば、私は、車に乗ってスーパーに買い物に行く。
これは、ヤーナンたちが森へ、薪や木の実などを集めに行くのと同じ
ではないだろうか?
ちょうど仕事の相手から電話がかかってきて、ある仕事を今後もシリ
ーズで受けてほしいという依頼をされ、私はそれを引き受け、向こう
半年くらいの自分の収入はこれで安泰だな…と見積もったけれど、そ
れは、ヤーナンたちが、獲得された肉の量を見て、それでどのくらい
の期間、食いつなげるかを見積もることに、似ていないだろうか…?


この本が誰にでも勧められる本なのかどうかはよくわからないし、読
む読まないは、もちろんその人の自由だ。
ただ、存在すら知らない本は、「読まない」という選択すらできない。
だから、ご紹介しておく。
もし興味を持たれた方がいたら、騙されたつもりで、上巻だけでも読
んでみてくだされば嬉しい。

    **********

話は変わるのだが、読書関連ということで、ついでに。
私が、その経歴も暮らしぶりもステキだと思って憧れているYUKKE
さん
は、今、ご主人の赴任先のメヒコでバカンスを楽しんでおられる。
彼女は相当な読書家(しかも速読派)でもあるのだが、出発前に、ブロ
グで、「海辺のリゾートで読むのにオススメの本を教えて下さい」という
趣旨の記事
が書かれていたことがあって、その時コメント欄は空白だっ
たので、私はパッと思いついた軽く読める本を2冊推薦してきた。
後日の記事によると、コメントしたのは私だけだったが、さすが人脈豊
富なYUKKEさん、実はたくさんの人からメールでオススメの本を教わ
り、それらの本で、スーツケースが一杯になったそうだ。
(私なんぞがしゃしゃり出る必要はなかったなあ…とちょっと恥ずかし
 くも思ったり…笑)

その本のリストが、「リゾートで読みたい本2」の記事に書かれていた。
つまり、「ちょこキャリ読者が選んだ、ビーチリゾートで読みたい本」
リストになっているのだが、そのラインナップがバラエティーに富んで
いて、それだけの情報が集まる交友関係も羨ましいし、お嬢さんからの
推薦の本などが含まれているのも、羨ましい。
(我が家の場合、子供に勧めてもらうのは漫画ばかりだもんなあ…笑)
タイトルを眺めているだけでも、よだれが出そう(笑)。
本好きの方には、ご参考になるかもと思う。

私自身は、常に「読みたい本」が溜まっている上に、“遅読”でもある
から、いつになるかはわからないのだが、これらのうちの何冊かも、
ぜひ読んでみたいと思っている。


《追記》
この記事を読まれたnoaさんが、早速『トナカイ月』を読まれて
ステキな感想を書いておられたのでご紹介。

 ・『不思議な図書館』(「とん ことり」の音がして)

夫などは、「トナカイ月」を結局上巻だけしか読まなかったけ
れど(読みごたえはあったらしい)、noaさんは、私のコメント
への返事の中で、「もう一度、読み直してもいいぐらいだわ」と
おっしゃっている。
そんな風に感じて下さった方がいたのが、嬉しい。
『トナカイ月』に興味はあるけど、まだちょっと迷っている…
という方は、どうぞご参考に。

 
スポンサーサイト
この記事のURL | 読んだ本・オススメ本・書評もどき | コメント:4 | トラックバック:0 | ブログトップページへ
<<4世代、“嫁と姑の間”で頑張ってきます!(明日から鹿児島) | ミセス・かんちがいのブログ日記 | エニアグラムをやってみたら、タイプ9だった>>
コメント
-反応せずにいられず-
こんにちは!ここでこの本に出合えるとは!!

現在飼っている雑種犬を拾ったとき、ペット本だけでなく犬そのものを知りたくていろいろ読みました。そのうちの一冊が「犬たちの隠された生活」でした。もうかなり記憶があやふやですが、最後、犬たちだけの集団で満たされた状態になる記述があったように記憶しています。今も「犬の幸せ」について考えるとき思い浮かぶ印象的な内容です。

犬を飼っているとやたらと擬人化してしまう傾向がありますが(私もそうです)、ふと立ち止まり、その野生に思いを馳せさせてくれる本だと思います。

同じ作者の「トナカイ月」は知りませんでした。ぜひ、読んでみたい!


2009-08-17 Mon 09:04 | URL | Carina #-[ 内容変更]
--
Carinaさん
「犬たちの隠された生活」、Carinaさんも読まれていたの
ですね~。何だか嬉しいです^^
飼い主に可愛がられている犬たちは、幸せそうに見える
し、実際に幸せなのでしょうけれど、でもそれは、長い
時間をかけて飼いならされてきたからで、犬の本来の幸
せとは違うのだろうな…と、私もちょっと複雑な気分に
なりました。
犬を飼っておられるなら、感じるところはなおさら多い
でしょうね…。

「トナカイ月」では、オオカミの話が出てきて、ああ、
犬の祖先なのだな…と思わされる描写が多々ありました。
ヒトのメスとして唸らされるところも多くて、Carinaさん
にも、きっと興味深く読んで頂ける1冊だと思います。
2009-08-18 Tue 23:35 | URL | ミセス・かんちがい #bhhZubZs[ 内容変更]
-借りてきました-
私も「トナカイ月」を図書館の書庫から借りてきました。

思い起こせば、子育て中に、読書会のおばちゃんが絶賛していた本で、当時予約が多くて借りられず、「アリューシャン黙示録」を読み漁って、予約をやり過ごすうちに海外転勤になって忘れていました。

あぁ~、本読みの時間が、もっと欲しいと願う日々。
老後の楽しみは満載だわ。


「父と暮らせば」の9月5日の夜の部、チケット予約いれました。

2009-08-31 Mon 15:54 | URL | YUKKE #q6.UxYrM[ 内容変更]
-いろいろ嬉しいです^^-
YUKKEさん
トナカイ月、そうですか、以前からお聞き覚えがありましたか。
どこの図書館にもあるようなので(それも書架でなく書庫に)、
きっと、昔、結構読まれていた本なのだろうとは思っていま
したが、やはり話題になっていたのですね。
私は子育て中は、そういう情報に疎くて知りませんでした。
「アリューシャン黙示録」も知りませんでした。
今アマゾンで見てみたら、これも、すごそうな長編ですね(^^;)

いろいろお忙しく活躍されているYUKKEさん、本好きでも
いらっしゃるから、読書の時間の確保には苦心されているこ
とと思います。 どうぞ、お身体だけは無理なさらずにね。

芝居のチケット…うひゃあ、YUKKEさんが取って下さった
なんて!
ありがとうございます! 恐縮で、汗、汗です…(^^;)

そうそう、Carinaさんのブログ、読まれているようですね。
彼女の文章、切れ味鋭くて、面白いでしょう?
私も大のお気に入りなんです。
いろいろ、楽しみを共有できて、嬉しい限りです^^
2009-08-31 Mon 23:34 | URL | ミセス・かんちがい #bhhZubZs[ 内容変更]
コメントの投稿














管理者だけに閲覧

トラックバック
トラックバックURL

FC2ブログユーザー専用トラックバックURLはこちら
| ミセス・かんちがいのブログ日記 |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。